我が心強き相棒「トレイルカメラ」
<1.序>
日本動物科学研究所所長であり「伊豆高原猫の博物館」館長でもあり、
イリオモテヤマネコやニホンカワウソ・モグラなどの研究・調査でも名高い動物学者
今泉忠明先生と共に、私、里中遊歩が定期的にフィールド観察を
始めることとなったのは2010年のこと。
以来、東京都内や千葉県など関東圏を中心に、
そこに棲息する野生動物たちの生態調査・観察を続けてきている私たちである。
だがしかし、その際に一つ問題があった。
野生動物というヤツらは一般的に警戒心が強く、
また嗅覚や聴覚、視覚などに優れており、その場の異変には非常に敏感なのだ。
しかも人間に対する警戒心は並大抵のものではない。更には、彼らの多くは夜行性だ。
調査・観察と言っても、一筋縄でいくものではない。
彼らの素顔……生活の一端を伺い知ろうとするだけでも、
相当の苦労が強いられるのである。
ことあるごとに、
「トレイルカメラ(熱感知センサーを利用して動物を自動撮影するカメラ)の一台でも
あれば良いのだけどなぁ」などと話をしたものである。
「僕も昔、カワウソ調査の時にメーカーから借りて使ったことがあるけど、
アレは確か数百万円するとか言ってたなぁ」とは今泉先生談。ひゃああ。
そんな大層なトレイルカメラは手に入れようがないが、それでもやはり欲しいではないか。
思い余って色々とネット検索などをしていたところ、
こんなサイトに辿り着いた私なのであった。
「トレイルカメラショップ」
「おー、コレは安いではないか!」思わずそう呟いていたものである。
ただ、安かろう悪かろうでは意味がない。
しばらく悩んだ末、「まぁでもこの価格ならば、万が一ダメであっても諦めもつくし、
とりあえず購入してみるとするか」との結論に至り、
Cuddeback社製トレイルカメラ「Capture」というヤツを思い切って購入してみたのであった。
2011年2月下旬のことである。
<2.実力発揮>
翌3月下旬、私たちは千葉県外房界隈の山中にいた。
渓流沿いにイノシシのかなり大きなヌタ場を発見した私たちは、
とりあえずこの場にトレイルカメラ「Cuddeback Capture」を仕掛けてみることにした。
夕方日暮れ前に仕掛け、期待に胸を膨らませつつ翌朝を迎える。
早速、「Capture」の撮影データ確認だ。
「おー、写っとる写っとる!」思わず叫んでしまっていたものだ。
そこには一頭のイノシシが川に沿って歩を進める場面が、
くっきりと写っているではないか。
いやぁ正直なところ、
ここまでくっきりと撮影できるとは思わなかった。
しかも時間表示までちゃんとしてあるのが嬉しい。
あの価格でこのクウォリティ、
凄いじゃないか「Cuddeback Capture」。
今泉先生は勿論、その時同行されていたTさん(学校の先生)も盛り上がり、
その後すぐ、件のトレイルカメラショップにて、
お二人とも2台ずつ購入されたのであった。
<3.更なる新兵器>
そして私ももう一台購入しようかどうか考えていたところ、
トレイルカメラショップの水谷さんより、思いがけないご提案を頂くこととなった。
「実はまだ販売していないが、新商品で『Cuddeback Attack IR』というのがある。
まずは自身で使用してみて、問題ないようであれば販売しようと考えていたが、
ちょうど3/11の地震に見舞われて全く動けない状態だ。
そこで、一台提供するので、申し訳ないがモニターとして使ってみてもらえないか?」
とのことだ。
そうか、このトレイルカメラショップの所在は、宮城県仙台市若林区なのであるか。
それではカメラテストなどをやっている場合ではないよな。
復興支援と言うにはおこがまし過ぎるが、
ほんの少しでも被災地の方のお役に立てて、しかも自分にとってもありがたい話、
断る理由は微塵もない。
というような経緯があり、私たちの手元には、
「Attack IR」という新兵器が届くに至ったのである。
この「Attack IR」、Capture同様に昼夜間の静止画撮影(フラッシュ撮影ではない為、
夜間はモノクロ撮影のみ)と同時に、昼夜間を問わず30秒間ずつの動画撮影が可能だ。
夜間の動画撮影が可能というのは、
特に夜間に活性化するイキモノの生態調査には非常にありがたい。
大きな期待感を抱きつつ、
とりあえず試しに我が家のベランダに一晩仕掛けておき、
同居ネコたちの夜間のベランダでの生態撮影に挑んでみた。
フラッシュ撮影をしないことから、
夜間の撮影ではこのように白黒でしか写らない。
だがその分、光でイキモノたちを驚かすことがない為、
無駄に警戒されることなく彼らの日常の姿を垣間見ることができるので、
これはこれで悪くない。
画質についても、そりゃあ良ければ良い程ありがたいのではあるが、
この価格でこれだけの画質、全く申しぶんないであろう。
そして動画の方はどうだろうか。
→コチラ←から。
おお、あれだけ真っ暗な中での撮影だというのに、
これだけ鮮明に映し出されるものなのであるのか。
これなら行動を見るには充分な明るさだし、
深い山中の漆黒の闇の中でも問題なく対応できるであろう。
なんと素晴らしいことか。
<4.昼間の撮影>
2011年7月初旬、私たちはまた千葉県外房界隈の山中にいた。
とある尾根道にてサルの糞や食痕などを発見、
どうやらニホンザルたちの通り道のようである。
「ではココに新兵器の『Attack IR』を仕掛けてみよう」
ということとなった。
まだ不慣れな手つきでセッティングをする私。
強いて言うのであれば、
センサーがどの位置に反応するのか(当たっているのか)が若干判りにくく、
慣れるまでが少しばかり難しい。
また、センサーの届く距離・範囲がもう少し長いと良いのになぁ、
などといった欲がなくはないが、まぁやはりこの価格でこのクウォリティ、
それは贅沢というものである。
本体の着脱も、付属の設置用バンドからワンタッチで簡単にできるようになっているし、
大味なイメージのあるアメリカ製品にしては、
なかなかに使い手の気持ちを汲み上げている商品であると言えよう。
かくして翌日、
何が映されているのかをワクワクしながら確認する私たち。
おー、やはりニホンザルが写っておるではないか!
時間を見ると午前9時ちょっと前。
明るい時間帯での撮影は、ちゃんとカラーで写っているし、
やはりそれなりに鮮明な画像だ。問題はない。
そして動画。
→コチラ←から。
おおおおお、群れだ群れだ!
静止画像では一頭しか写っていなかったが、
動画だとその間の30秒に起こっていることが映し出されているので、
写真だけからでは見えてこないドラマを垣間見ることができるのである。
画質も全く問題はない。
素晴らしいではないか。
<5.夜間の雨天時撮影>
そして2011年9月中旬。
私たちは東京都奥多摩町の、とある山中にいた。
「都内に棲息する野生生物観察・調査」も私たちのテーマの一つなのだ。
ある山道の近くに、
随分と頻繁に使用されていると思しき、一本の「ケモノ道」を見つけた。
「ここはなかなか良さそうなケモノ道ですねぇ。
毎晩のように何かが通っていてもおかしくないくらいに、
色々な痕跡が見受けられますし……」
などと今泉先生を話をしつつ、「Attack IR」をこの場に仕掛けてみることに決定。
場所としてはかなり期待できるとは思ったのだが、
一つ懸念されたのは天候であった。
当日は昼から雨が降ったり止んだりの天気であり、
陽が暮れた頃からは本格的に降り出してしまっていたのである。
「Attack IR」は、
ある程度の雨天であればそれなりの防水加工が為されているとのことなので、
本体がどうこうなってしまうといった心配はない。
だがしかし、結構な大雨の中、しかも真っ暗な山中で、
何かがその前を通った際、どこまで鮮明に映し出してくれるのであろうか、
という心配はあったのだ。
翌朝、夜間の雨が嘘のように晴れ上がった空の下、
「Attack IR」を仕掛けておいたケモノ道に向かう。
そして画像確認だ。
おー、立派な角を持つ雄のニホンジカではないか!
ちょっと顔の部分が白く光ってしまっているが、
コレは雨の影響ではないだろう。
なんだ、雨の中でも全く問題なく撮影できているではないか。
動画はどうだ?
→コチラ←から。
おお、コチラは顔もしっかり映し出しておるなぁ。
やはり雨の影響は全くない。
ふむ。雨降りの夜間でも問題なく使用できるのであるな。
素晴らしい。
そしてその後、私が追加でもう一台、
「Attack IR」を購入したのは、当然の流れなのであり、
今となっては私たちのフィールド探索時にはいなくてはならない、
大切な「相棒」なのである。
<6.贅沢な期待>
そんなこんなで、すっかり「Cuddeback」シリーズの虜となってしまった私であるが、
それだけに本シリーズの今後の更なる進化を望んで止まない。
その際、「こんな機能が付加されたら良いなぁ」といった、
強欲とも思える望みを、最後に期待を込めて以下に記していきたい。
■動画撮影時間は現状30秒固定であるが、
できれば、30秒・60秒・120秒などと選べるようになってくれると、なお嬉しい。
■現状では、「SDカードを他のメディアに移し変えて確認」という作業が必要だが、
小さくても良いので本体上で撮影画像サムネールなどを
確認できる機能が加わると、なお嬉しい。
■セッティング時など、裏面フタの開閉がネジ式なのが少々面倒。
ワンタッチで開閉ができるようになると、なお嬉しい。
■動画について、MP4対応ソフトを使用しなければならず、
私の場合は、元々PCに入っていたソフトでは対応できずに
新たにダウンロードする必要があった(勿論、人によって違うと思うが)。
その際、「どのソフトを使用するのが良い」などの目安があると、なお嬉しい。
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